「アスタキサンチン」と「亜鉛」の摂取による睡眠改善効果を確認
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富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、高い抗酸化力を有することで知られる成分「アスタキサンチン」と「亜鉛」をマウスに摂取させる試験を、公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所 裏出良博氏との共同研究で実施し、両成分を同時に摂取することで、高い睡眠改善効果が得られることを確認しました(図1)。
今回、両成分の新たな機能として確認できた睡眠改善効果は、アスタキサンチンと亜鉛が、視床下部や脳幹など、脳内の睡眠をつかさどる領域に何らかの作用をしている結果ではないかと推察しています。
当社は抗酸化作用をはじめ、眼精疲労の回復や、肌の保湿力の向上に関わる作用があるとされる「アスタキサンチン」に着目し、これまでにアスタキサンチンが高い一重項酸素消去能を有する*1ことを実証しました。また、活性酸素除去酵素SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)*2の構成成分である「亜鉛」についても、その抗酸化作用に注目し、サプリメントに応用してきました。
今後も、アスタキサンチンと亜鉛による睡眠改善メカニズムの解明を進めるとともに、各成分のさらなる健康増進機能の解明と新たな応用を進めていきます。
本研究内容は、平成25年6月27日から開催される第38回日本睡眠学会定期学術集会にて発表する予定です。
研究の背景
これまでに、アスタキサンチンと亜鉛を含む食品のヒトへの体感試験を行った際、よく眠れる、寝覚めが良いという体感が多く得られています。そこで、特定の成分をマウスに摂取させ、マウスの「行動量試験」を行いました。その結果、アスタキサンチンと亜鉛などを、ともに摂取させた場合と、亜鉛単成分を摂取させた時に睡眠改善効果が確認された為、さらに詳しく脳波測定による実験を行いました。
実験方法
マウスの体重1kgあたり(1)アスタキサンチン46mgと亜鉛73mg、(2)亜鉛単成分で73mg、(3)水(比較対象)を、それぞれ7匹のマウスに経口投与しました。その後、脳波計により睡眠中のマウスの脳波測定を行いました。脳波計での測定データをもとに、入眠から4時間におけるノンレム睡眠時間の長さを計測しました。マウス7匹のノンレム睡眠時間の平均値を図1に示しています。
結果
マウスに亜鉛を摂取させると、比較対象である水を摂取させた場合と比べて、ノンレム睡眠時間が約2倍になることがわかりました。さらに、亜鉛とアスタキサンチンを同時に摂取させた場合、更にノンレム睡眠時間が長くなり、水を摂取した場合と比べて3倍以上、亜鉛単成分に対しても約2倍となり、深い睡眠が得られることがわかりました。これらの効果は、アスタキサンチンと亜鉛の摂取により、視床下部や脳幹などの脳内の睡眠をつかさどる領域に何らかの作用をしているのではないかと推察しています。
睡眠について
睡眠は、深さと特徴により、レム睡眠とノンレム睡眠に分類できます。身体は休息しているのに脳が活動している睡眠のことをレム睡眠と呼び、脳の活動も低下している睡眠状態をノンレム睡眠と呼びます。ヒトは眠り始めると、まず深いノンレム睡眠に入ります。その後、レム睡眠とノンレム睡眠とを、合わせて平均90分のサイクルで繰り返します。良い睡眠とは、寝付くまでの入眠時間が短く、また眠り始めてから最初の約3時間にノンレム睡眠の占める割合が多く、さらに夜中に起きる(覚醒する)ことがない睡眠のことです。良い睡眠をとることで、寝起きがスッキリします。
アスタキサンチンとは
アスタキサンチンは自然界に広く分布している天然由来の抗酸化成分で、サケやエビ、カニなどに多く含まれるカロテノイド(色素)の一種です。ヘマトコッカス藻あるいはオキアミを原料としたアスタキサンチンが、機能性食品の原材料として使われています。トマトのリコピンや人参のβ‐カロテンなどのカロテノイドが活性酸素を消去する抗酸化作用をもつ成分として知られています。アスタキサンチンは、これらよりも強い抗酸化作用をもつ成分として、最近注目されています。
亜鉛とは
亜鉛は、牡蠣,豚レバーなどに多く含まれる成分で、体の様々な働きに関与する必須ミネラル16種のひとつです。また、体の中にある酵素の構成成分で、活性酸素を除去するSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)と呼ばれる活性酸素除去酵素の構成成分でもあり、抗酸化作用にも関わります。
今回の試験において、睡眠改善効果という、抗酸化作用とは異なるアスタキサンチンと亜鉛の新たな効果を見出すことができました。これまでに、アスタキサンチンと亜鉛を含む食品のヒトへの体感試験を行った際、よく眠れる、寝覚めが良いという体感が多く得られています。今後、このアスタキサンチンと亜鉛とによる睡眠改善メカニズムの解析を進めるとともに、ヒトでの睡眠改善効果検証試験を実施し、アスタキサンチンと亜鉛の新たな応用を検討していきます。
*1 富士フイルムの解析技術センターによる研究の結果。アスタキサンチンは、自然界に存在する種々の抗酸化成分の中で、特に一重項酸素の消去能力が格段に優れており、美肌効果などが期待されるコエンザイムQ10の約1,000倍*3の一重項酸素消去速度を有することが確認されています。
*2 SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)は、生体内で発生する活性酸素の一つであるスーパーオキシドアニオンラジカルを反応させて過酸化水素と酸素に変換します。
*3 森淳一ほか、アスタキサンチンの in Vitro 抗酸化能測定。 アスタキサンチン研究会 2007.9.12報告。