マギー・チャン(張曼玉)
1964年香港生まれ。8歳から英国に移住し、18歳で映画デビュー。『ポリス・ストーリー』シリーズで人気に。1991年『ロアン・リンユィ 阮玲玉』でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。香港電影金像奨を5度受賞。2004年に女優業を休業。
ART
2023.07.21
1964年香港生まれ。8歳から英国に移住し、18歳で映画デビュー。『ポリス・ストーリー』シリーズで人気に。1991年『ロアン・リンユィ 阮玲玉』でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。香港電影金像奨を5度受賞。2004年に女優業を休業。
1960年代の香港で、隣人同士が許されない恋に落ちていく様子をエレガントかつノスタルジックに描いた、ウォン・カーウァイ監督の映画『花様年華』。英BBCの「21世紀 最高の映画100本」で2位に選ばれるなど、高く評価されました。
作品の中で特に印象的なのが、色鮮やかな花柄のチャイナドレスを約25着も着こなすマギー・チャンの姿です。トニー・レオン演じる新聞記者との密やかに燃え上がる恋愛は、一瞬一瞬が美しく、失われてしまった時代への郷愁をかき立てます。マギーは揺れ動く心境を抑え、凛とした女性像を演じました。
デビュー当時はアイドル路線だったマギーですが、カーウァイ作品への出演をきっかけに演技派に。香港返還の時代にたくましく生きる女性を好演した『ラヴソング』や、オリヴィエ・アサイヤス監督の『イルマ・ヴェップ』で見せたボンデージ・ファッションの妖艶な姿など、鮮烈なイメージを残しています。
©Alamy / Cynet Photo
アサイヤスと結婚し(後に離婚)、フランス語を流暢に操ってヨーロッパでも活躍し、彼の作品『クリーン』ではカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。以降は引退状態になり、音楽や映画のフィルム編集を学びました。潔く栄光の座を去り、新たな分野に挑んだ姿勢は、挑戦心あふれる彼女らしい選択と言えるでしょう。
マギーのその香り立つような美しさは、映画『花様年華』の中に永遠に刻み込まれています。
©Avalon / Cynet Photo
『花様年華』に登場した艶やかなチャイナドレスは、今も多くのデザイナーのインスピレーションの源泉です。ロベルト・カヴァリは『花様年華』に影響されたコレクションを2015年に発表。同年、アーデムがアレクサ・チャンとコラボレーションして発表したコレクションもこの作品にインスパイアされました。ドレスを着たときの優雅な身のこなしも魅力です。
Text:森 菜穂美