ART

2023.02.24

女性の美を繊細に描いた画家
上村松園「序の舞」

女性の美を繊細に描いた画家

©Alamy / Cynet Photo

PAINTER

上村松園

1875年に京都の茶屋の娘として生まれ、父を早くに亡くす。12歳から京都府画学校で学び、早くから才能を発揮。25歳のときに『花ざかり』で銀牌を受け、画壇での地位を確立。73歳のときに女性初の文化勲章を受章。1949年に死去した。息子・松篁(しょうこう)も著名画家。

女性初の文化勲章を受章

京都の茶屋に生まれた上村松園は、子どものときから絵を描くことが大好きでした。25歳で『花ざかり』が銀牌を受賞するなど多くの章に輝きます。「松園の美人画は内容がない、無表情」という批判もありましたが、彼女には美学がありました。

女性初の文化勲章を受章

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▲明治時代の京都の街並み。松園はこの街で、江戸や明治の風俗を吸収した。

女性の美に対する理想と憧れ、強い意志を表現

「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」「私の美人画は、単にきれいな女の人を写実的に描くのではなく、写実は写実で重んじながらも、女性の美に対する理想やあこがれを描き出したい」。そう語った彼女の理想が代表作『序の舞』に具現化しています。

華やかな赤い振袖姿で、扇子を持ち、気高く優雅に舞う女性。松園は『序の舞』について「何ものにも犯されない女性の内に潜む強い意志をこの絵に表現したかった」「この絵は、私の理想の女性の最高のものと言っていい、自分でも気に入っている『女性の姿』であります」と語りました。モデルは、松園の息子である松篁の妻・たね子。評判の結髪師(けっぱつし)に文金高島田を結ってもらい、婚礼時の大振袖を着たものです。松園は髪形や着物にこだわりがあり、帯や帯締めの柄、簪(かんざし)も繊細に描写しました。

ほかにも、乱心を装って恋人を追う女性を描いた『花がたみ』、六条御息所を描いた『焔(ほのお)』などのドラマチックな作品も格調高く描き、女性初の文化勲章を受章した松園。彼女が繊細に描いた女性たちの美しさは時を超え、私たちを魅了しています。

美への影響

着こなしのアクセントに赤の差し色を効かせて

着こなしのアクセントに赤の差し色を効かせて

©Alamy / Cynet Photo

上の『春芳(しゅんぽう)』に見られるように、松園の作品には赤い差し色が多く見られます。簪、半襟、帯などに赤色を効かせ、さらに鮮やかな赤い口紅で唇を彩っています。松園は「口許の美しさ」という題名で文章を書くなど、特に口紅の付け方についてはこだわりを強く持ちました。アクセントとして赤を効かせるのは、現代女性にとってもおしゃれのヒントとなりそうです。

Text:森 菜穂美