フリーダ・カーロ
1907年、メキシコシティ郊外生まれ。予科高等学校で学んでいた18歳のとき、交通事故に遭い、大けがを負う。29年、画家のディエゴ・リベラと結婚。39年には、ルーブル美術館が作品を購入した初のメキシコ人画家となり、評価を確立した。54年逝去。
ART
2022.12.23
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絵画などに描かれた美しい人々、装い、ヘアメイクの中には現代を生きる私たちの美の感性を刺激するヒントがたくさんあります。
今回はフリーダ・カーロの魅力をひも解きます。
1907年、メキシコシティ郊外生まれ。予科高等学校で学んでいた18歳のとき、交通事故に遭い、大けがを負う。29年、画家のディエゴ・リベラと結婚。39年には、ルーブル美術館が作品を購入した初のメキシコ人画家となり、評価を確立した。54年逝去。
色鮮やかな民族衣装、結い上げられた髪、つながった濃い眉毛という個性的な美しさを持つ、メキシコの画家フリーダ・カーロ。医師を目指す活発な少女でしたが、18歳のときにバスの事故で大けがを負い、30回以上の手術を受けても、終生その後遺症に苦しみました。47年の生涯で描いた作品の3分の1以上は自画像で、彼女はその中で傷だらけの体と心の葛藤を毅然とさらけ出しています。
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フリーダが絵を始めたのは、寝たきりとなった生活の暇つぶしのためでしたが、やがて絵画は彼女の苦痛に満ちた心の状態を表現し、生きるための闘いの一部となりました。高名な画家のディエゴ・リベラと結婚し、彼の妻として有名になったものの、2人の関係は複雑でお互い浮名を流しました。その愛の喜びと苦悩も、フリーダは自らの芸術として昇華させたのです。
彼女のファッションは作品同様、自身を表現する要素でした。先住民テワナ族の血を引く彼女はその民族衣装を好んで着ましたが、それはヨーロッパ的ブルジョワに対する批判でもありました。また、長いドレスは後に切断する脚を隠し、ゆったりとしたブラウスはギブスを隠す役割も果たしていたそうです。
晩年に寝たきりとなっても毎日祭りに行くように着飾り、宝石、花、リボンなどで華やかに装ったフリーダ。彼女の凛とした姿勢は、多くのフェミニストにも影響を与え、現代のわれわれにも勇気を与えてくれます。
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フリーダの強い生き方と個性を反映した装いは、多くのデザイナーに影響を与えています。ヴァレンティノ、ズッカ、ジャスト カヴァリなどのブランドは、彼女にインスパイアされたコレクションを発表。民族衣装や大胆な色彩感覚を取り入れました。彩度の高いフォークロア要素に満ちたデザインからは、フリーダらしい個性あふれる力強い女性像を感じられます。
Text:森 菜穂美