ヨハネス・フェルメール
1632年、オランダ・デルフト生まれ。15歳頃に画家修業を始め、風俗画家として頭角を現して名声が広がる。しかし生活に困窮し、75年に43歳で死去。19世紀に再評価されるまで、死後はほぼ無名状態であった。現存する作品が32点ほどと希少である。
ART
2022.04.28
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Johannes Vermeer, Girl with a Pearl Earring, c. 1665, Mauritshuis, The Hague
絵画に描かれた美しい人々、装い、ヘアメイクの中には現代を生きる私たちの美の感性を刺激するヒントがたくさんあります。
今回は、フェルメール作品の少女が持つ謎めいた美に迫ります。
1632年、オランダ・デルフト生まれ。15歳頃に画家修業を始め、風俗画家として頭角を現して名声が広がる。しかし生活に困窮し、75年に43歳で死去。19世紀に再評価されるまで、死後はほぼ無名状態であった。現存する作品が32点ほどと希少である。
オランダの名匠フェルメールの作品の中でも、多くの人の心をとらえて離さない傑作です。
大きく潤んだ瞳に光を湛えた少女。みずみずしい肌、濡れたような唇は少し開いて微笑み今にも話しかけてきそう。斜め横向きから肩越しの視線は、振り向いたばかりのようなライブ感もあり、どこを見ているのか判然としないところが謎めいていて、想像力を掻き立てます。
ターバンの青と黄色、真珠の白、赤みを帯びた唇というシンプルな色調が暗い背景に浮かび上がる色彩設計は、21世紀の私たちが見ても魅惑的な女性の姿です。
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米国の作家トレイシー・シュヴァリエは本作に着想を得て、小説『真珠の耳飾りの少女』を書き、映画化されました。映画の中では少女はフェルメールの家の小間使いですが、実際のモデルは誰だったのかは判然としません。その謎も少女の魅力をもたらしています。
そして何よりも、絵のタイトルとなっている真珠の耳飾り。大粒で、少女の白い襟が映りこんで光を反射しています。2020年に結果が発表された科学調査によれば、真珠に見えるのは錯覚で、耳飾りのフックも描かれていないそうです。しかし、真珠のようにも見える首元の光が、作品に清らかな輝きを与えています。
幾多の謎もさることながら、作品そのものの湛える美しさが、私たちに少女のピュアな美しさを感じさせます。それが、時を超えて本作が愛され続ける理由なのかもしれません。
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この作品の美のキーポイントとなったのが真珠。17世紀オランダでは、東インド会社を通じての交易でもたらされた真珠が宝飾品として女性の憧れの的でした。それを象徴するかのようにフェルメールの作品には「真珠の耳飾りの少女」他12作品に真珠が登場しています。フェルメールの作品から、服やメイクと合わせた真珠の魅せ方のヒントが見つかるかも。