富士フイルム スキンケア研究 最前線

固定観念にとらわれない
独自の美白研究
「角層メラニン」

古田 美波
バイオサイエンス&エンジニアリング研究所
富士フイルム研究員 古田 美波

「角層メラニン」とは何ですか?
また、研究を始めたのはどういった経緯ですか?

古田
「角層メラニン」とは、肌の最上層にある角層に蓄積されたメラニンを指します。一般的に、メラニン研究は、肌の深い部分に存在するシミに関するものがほとんどで、今回私たちは肌の表層部分のメラニンに着目しました。
着目したのは、メラニン研究において新しい発見やアプローチを提案したいと考えたのがきっかけです。これまでのメラニン研究の延長上では、画期的なアプローチは発見できません。新しい着眼点で研究をする必要があると考えていました。メラニン研究において角層はあまり着目されていませんでしたが、当社は、角層は肌にとって非常に重要な組織だと考えています。例えば、外的刺激から肌を守るバリア機能や、肌内部の水分を保持する保湿機能など、肌の基本的な機能を担っています。そこで、「角層」と「メラニン」を掛け合わせて、新たな美白アプローチができないか、考えました。
富士フイルム研究員 古田 美波

研究を行うにあたっての課題は何がありましたか?

古田
メラニンは、肌の奥深くに多く存在していることが知られていますが、角層にどれほど存在しているのかよく分かっていませんでした。そこで、肌断面画像を用いた肌内部のメラニン分布を目視で確認しましたが、数十枚の解析が限界であり、「角層にもメラニンが蓄積されている」ことを実証するためには、より精度の高い実証データを集めなければいけませんでした。そこで、当社の医療分野で活用しているAI画像認識技術を肌解析に応用しようと考え、830枚もの画像解析を行うことに成功。「角層メラニン」の存在を実証することができました。これは、幅広い分野の技術・知見を蓄積してきた富士フイルムならではの成果だと言えると思います。

AIによる画像解析はどのように進められたのでしょうか?

古田
AIを皮膚内のメラニン分析の解析に応用した例はなかったため、私が目視で確認した100枚の解析画像を元に、AIでディープラーニングを行うことからスタートしました。まず、顕微鏡画像(1)を5つの層に分け(2)、その後メラニンの分布を可視化しました(3)。
AI解析によって角層におけるメラニン量の解析画像

そもそも、メラニンが肌のくすみに影響するのは、
どういったメカニズムなのですか?

古田
メラニンの特性は「青色の光を吸収し、黄色の光を反射する」ことです。青色の光は、肌の透明感を生み出す光のため、メラニンが角層に蓄積されると肌の透明感は低下します。さらに、黄色の光を反射すると、肌が黄色く見えるため、結果的に「黄色くくすんだ印象」にみえてしまいます。
角層に溜まるメラニンが、肌の透明感を奪う / メラニンが少ない角層とメラニンが溜まった角層イラスト

「マロニエ」にはどんな効果があるのでしょうか?

古田
メラニンが蓄積された角層細胞の剥離(ターンオーバー)を促進する効果があり、これによって角層メラニンを肌の外に排出することができます。
「マロニエから抽出したエキス」の優れた点は、メラニンを含まない細胞には働かず、メラニンが蓄積された細胞にのみ働く点です。ピーリングなどのように、角層のターンオーバーを促進するアイテムはありますが、メラニンの有無にかかわらず、正常な細胞も強制的に剥がしてしまうというデメリットもあります。それに対して、マロニエから抽出したエキスは、メラニンが滞留している細胞にだけに働くという点で、とても有能な成分だと考え、選択しました。
富士フイルム研究員 古田 美波

研究開発において、大切にしていることを教えてください。

古田
固定観念にとらわれない新しい着眼点を持つことを大切にしています。今回は、一般的に着目されてこなかった「角層メラニン」の研究に挑戦しました。初めは、「角層にメラニンが多く存在するのだろうか。」という疑念を抱いていましたが、実際にAI画像解析技術を応用した解析結果を踏まえると、肌に与える影響を看過できないほど角層メラニンが存在していることが分かり、大きな発見につながりました。今回の研究開発を通して、改めて固定観念にとらわれず、新しい着眼点で取り組むことの大切さを実感しました。
また、富士フイルムならではの独自性も大切にしています。私たちは、日々「それは独自なのか?」と問われながら研究に取り組んでいます。私たちにしかできないような商品開発を志ざし、お客さまの喜びにつながるような研究を続けていきたいと思います。

「NEVER STOP 挑戦だけが、未来をつくる。」を掲げる御社の姿勢を踏まえ、今後挑戦していきたいことをお聞かせください。

古田
今回の研究ではこれまで人々の目に留まらなかった角層のメラニンが実は大きな影響を持つことを発見しました。今後も従来の固定概念に囚われない姿勢で、小さな疑問や「なぜ」をきっかけとしてこれまでにない新しい切り口の研究に挑戦していきます。
富士フイルム研究員 古田 美波

研究員プロフィール

古田 美波
Minami Furuta
バイオサイエンス&
エンジニアリング研究所
富士フイルム研究員 古田 美波
2018年入社、専門分野は生化学。
入社時よりメラニンに関する研究を続け、今回初めて新商品のエビデンス開発に携わる。

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