Interview

化粧品を変革し続ける

ナノテクノロジー

柳 輝一

富士フイルム バイオサイエンス&エンジニアリング研究所
統括マネージャー

  • 1997年

    富士フイルム入社
    コラーゲンをはじめ、写真フィルムや印画紙に使うさまざまな機能性材料について研究。
    その後、インクジェット用インクの開発にも従事。

  • 2012年

    化粧品の研究開発を開始。美容成分のナノ化のほか、製剤や容器の開発なども経験。

  • 「アスタキサンチンを化粧品に」
    を実現

    世の中には、非常に高い効果を持つことがわかっていても、化粧品に配合するのが難しい美容成分がいくつもあります。かつてアスタキサンチンもそうでした。肌にハリを与える力がとても優れているのに、水に溶けないため化粧品に配合できなかったのです。
    これを可能にしたのがナノテクノロジーでした。ナノテクノロジーとは、成分を微粒子サイズにまで小さく(ナノ化)するとともに、凝集しない(成分がくっつき合わない)よう分散させる技術で、水に溶けないものでも水溶液の中に安定した状態で配合することができます。
    写真フィルム国産化のために創業した90年以上前に、富士フイルムはナノテクノロジーの研究を開始。インクジェット用インクの色材やポリマー微粒子をはじめとして、幅広い製品で活用し、多彩で優れた技術を確立したのです。アスタキサンチンを化粧品にできたのも、そのためでした。

  • 化粧品ならではの課題を克服

    化粧品は毎日肌につけるもの。安心して使える限られた材料だけで、求める機能を実現しなくてはなりません。また、お客さまに気持ちよく使っていただけることも大切。例えば、代表製品の「ジェリー アクアリスタ」なら、蓋を開けた瞬間のキラキラしたジェリーの状態を最後まで体感できる必要があります。非常に高いレベルの品質の安定性が求められるのです。
    これを解決したのが、素材開発や製品開発、分析の専門家など、さまざまな分野の研究員たちによる協力でした。ナノ化した成分は通常、そのままにしておくと再びくっついてしまいます。これを防ぐために、原因を詳しく解析し、全社一丸となって地道に解決方法を探していったのです。
    「品質に関することは決して妥協しない」という企業精神も、努力を後押ししました。

  • ナノテクノロジーが
    生んだ最大の特長

    写真フィルムを製造できたメーカーは、世界中で富士フイルムを含めて4社だけでした。高度で幅広い技術が必要で、参入が難しかったからです。その技術力が今も、新たな化粧品を生み出し続けています。
    そんな富士フイルムのナノテクノロジーには、水に溶けない成分を“溶かす”ことのほかに、もうひとつ重要な役割があります。それは、成分を微粒子にすることで、肌に浸透しやすくするという役割です。角層と角層のすき間は非常に狭いため、成分を肌に浸透させて、その効果を発揮させることがむずかしいという問題があります。しかし、ナノテクノロジーは、成分を極小化することで、肌のすみずみまで届けることができます。高い浸透力は、「アスタリフト」シリーズが誕生した2007年から現在に至るまで、富士フイルムの化粧品の最大の特長となっています。

  • 尽きることのない
    ナノテクノロジーの可能性

    私自身、写真フィルム、インクジェット用インク、化粧品とさまざまな製品を開発してきましたが、共通の軸はナノテクノロジー。入社以来、ずっとナノテクノロジーに関わっています。
    化粧品分野では今、ナノテクノロジーとリポソーム技術を組み合わせ、水に溶けやすい成分をもしっかり届けることに取り組んでいますが、実はナノ化には全く別の効果もあるといわれています。微粒子にすると、質量は同じでも表面積が大きくなるため、成分の表面で起きる反応が高まるのです。これは将来、今以上に効果を感じていただける化粧品につながるはずです。
    これからも科学者としての誇りを持って、皆さまに喜んでいただける新たな化粧品を生み出し、地球上の笑顔の回数を増やしていけたらと思っています。

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